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人やモノ、技術、想いがつながる拠点に
ヒロセ工業は、ISO14001(環境マネジメントシステムの国際規格)の認証取得や京-VER(中小企業クレジット)創出事業への参加など、積極的にSDGsに関する取り組みを進めています。2023年3月には、新たな取り組みとして縁ラボをオープンしました。縁ラボの概要を教えてください。
縁ラボは、人やモノ、技術、想いがつながる、丹後における新しいものづくりや産業観光の拠点として開設しました。当社はリニアモーター駆動の5軸加工機などを駆使した金属の切削加工を得意としていますが、昔から絹織物の産地として栄えた丹後には、高い技術力を持った企業が集積しています。さらに近年では、豊かな自然環境に引かれて丹後に移住したり、起業したりする人も増えてきました。縁ラボは、こうした企業や団体、個人が連携して、ものづくりにチャレンジする場です。
多くの人が集まってさまざまなアイデアを生み出せるよう、縁ラボには最大30人が収容できる会議室や最大20人が集まれるLABO室をつくりました。オンライン会議などもスムーズに行えるよう、高速Wi-Fi環境や75インチの液晶モニター、100インチスクリーン、プロジェクターなどの設備も整っています。ぜひ企業や団体の研修などに利用していただきたいです。丹後には多彩な食や温泉といった観光資源もそろっていますので、自治体や観光事業者の協力を得て、工場見学と絡めたものづくりツアーを実施するなど産業観光にも活用したいですね。
業種や分野を超えた縁で、丹後全体を発展させていく
なぜ縁ラボを開設しようと考えたのですか。
当社は金属切削のプロ集団として、機械・航空・車両・医療といった幅広い分野で使われる金属部品の加工を手がけています。そして2013年ごろからは、高精度の切削技術を生かしたオリジナル商品の開発を進めてきました。しかし、品質のよいものができても、デザインに課題があってなかなか世に出すことができませんでした。私たちは金属切削のプロではありますが、デザインは難しかったんですね。それが、東京の展示会であるデザイナーと出会い意気投合したことで、一気に商品開発が進みました。
私は、世の中の全てが人と人との縁で回っていると思っています。1者だけでは何もできません。オリジナル商品の開発でも人の縁、異業種との縁がプロジェクトを動かしました。こうした縁のおかげでこれまでに、チタン製印章や遺灰を入れて持ち運べるカード型ケース、加賀蒔絵や越前漆器とコラボレーションしたチェスセットを完成させることができました。
また、少子高齢化や人口減少が進む中、次世代に目を向けた時に、自社だけで技術を磨いたり、新商品の開発に取り組んだりしていても、丹後地域全体の発展にはつながりません。丹後が発展していくためには、当社を含む機械金属業や織物、農業、アート、食品、観光といったさまざまな業種の人たちが連携してものづくりに取り組み、全国、そして海外に丹後の技術を発信していく拠点が必要だと考えたのです。
織物と機械金属の連携など、縁ラボから新たなチャレンジを
これから縁ラボをどのように活用したいですか。今後の展望について聞かせてください。
まずは当社が見本を示すような形で、さまざまな業種と連携したものづくりに取り組んでいきたいです。縁ラボには、当社がこれまでに開発したオリジナル商品を展示し、多くの方々に見ていただきます。
私は現在、地域の方々と「丹後活性化委員会」という有志の会をつくり、定期的に地域の課題になどについて話し合っています。縁ラボも、委員会でディスカッションする場に活用したいですね。委員会では現在、丹後の代表的な産業である織物業と機械金属業とで連携し、伝統的な織機を参考に最先端の織機をつくるプロジェクトに取り組んでいます。工作機械を制御するためのNCデータや画像センサーなど機械金属の技術を生かして、より効率的に、安全に製品を生産できるようにしたいです。
伝統的な絹織物「丹後ちりめん」の生産が栄えたのは、雪深い冬でも職人たちが日々、こつこつと織機を動かして技術を磨き、品質にこだわったものづくりを進めてきたからです。こうした心を込めたものづくりは機械金属をはじめとした丹後の幅広い産業に受け継がれています。現場で働く人たちの技術力やものづくりにかける思いは、丹後が世界に誇れるものであると自負しています。
これらの技術や思いを生かしたものづくりを、国内だけでなく、海外の方にも知っていただきたい。国内、海外を問わず多くの方々とつながって、さまざまなことにチャレンジしていきたいです。