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団体 2024.3.15

国の天然記念物、琴引浜の「鳴き砂」や漂着ごみを展示、「海の環境保全の大切さを知ってほしい」

 歩くと音が出る「鳴き砂」で知られ、国の天然記念物及び名勝に指定されている京丹後市網野町の琴引浜は、人工構造物がなく、自然のままの状態が残されています。同町にある琴引浜鳴き砂文化館では、琴引浜を取り巻く生態系や漂着ごみなど鳴き砂に関する展示を通して、人と自然の関わりや海洋保全について学ぶことができます。2018年から館長を務める田茂井秀明さんに、鳴き砂の仕組みや文化館の活動、今後の展望などを聞きました。

琴引浜鳴き砂文化館館長の田茂井秀明さん

琴引浜に流れ着いたごみから、海の環境保全について学ぶ

長年住民らが協力して鳴き砂の保護活動を続けている琴引浜は、海の環境保全などSDGsの精神を体現している場所でもあります。琴引浜鳴き砂文化館ではどのようなことに取り組んでいますか。

琴引浜鳴き砂文化館は、鳴き砂を通して、人と自然の関わりや海の保全について学んでもらう施設です。来館された方には、鳴き砂からどのようにして音が出るのかという原理を説明した後、琴引浜の漂着物を見てもらいます。琴引浜には、浮き玉や網、ロープといった漁具やペットボトル、プラスチック製品の中間原料であるレジンペット、使い捨てライター、医療廃棄物などさまざまな物が流れ着きます。海外からのごみも多いです。これらの漂着物について話し、海の環境保全が大切なことを理解してもらっています。

琴引浜を巡っては1987年、地域の住民の方々が「琴引浜の鳴り砂を守る会」を結成されました。以降、住民の方々は協力して海岸の清掃など鳴き砂の保護活動に取り組んできました。当館は、こうした活動の中で2002年に開館しました。私は縁あって、2018年から館長を務めています。

各国から流れ着く使い捨てライター

手つかずの海岸に残る、豊かな生態系

鳴き砂から音が出る仕組みや、琴引浜を取り巻く環境について教えてください。

琴引浜の砂には、「石英」という鉱物が多く含まれています。砂の上を人が歩くなどして圧力がかかると、砂の層が振動して音が出ます。しかし、手足の油分や、目に見えないちりやほこりなどで砂が汚れると、音が出なくなるんです。砂が波で洗われてきれいになれば、また鳴くようになります。ただし、汚れた分だけ砂の再生には時間がかかります。ですから、浜の清掃活動が大切になってくるのです。

そして、琴引浜のすごいところは鳴き砂だけではありません。ここは、波よけなどの人口構造物がない自然海岸なんです。昔のままの姿ですので、潮の流れも変わっていません。そして、昔のままの生態系が残っているんです。きれいな海だけに生息している大きさが2ミリ~4ミリの“微小貝”、砂浜には10センチ~20センチの穴を掘って住居をつくる“イソコモリグモ”、浜の後背地には、春の女神と呼ばれる“ギフチョウ”や海浜植物の“イソスミレ”など希少な動植物が多く見られます。こうした豊かな生態系は、一度壊れると元には戻りません。

鳴き砂はなぜ鳴くのか?わかりやすく展示され、体験もできる

水筒を持ち歩き、レジ袋はもらわない……日々の行動に変化

文化館での活動を続けてきて、自身の考えや行動に変化はありましたか。

人に話をするためには、まず自分から学び、行動をしなくては説得力がありません。浜について知り、清掃活動に参加する中で、自分自身のごみに対する意識や日常の行動が変わっていきました。例えば、水筒を持ち歩くようになりましたし、コンビニエンスストアやスーパーで割り箸やスプーンはもらわなくなりました。買い物にはバッグを持っていくので、レジ袋もいりません。使い捨ての物は、できるだけ購入しないようにしています。

文化館に来られた方の反応はいかがですか。

文化館には、環境に関心がある方だけでなく、観光が目的の方も来られます。割合としては、だいたい半々でしょうか。関心がある方には、1時間ほど説明することもあります。観光の方に興味を持ってもらうのはなかなか難しいですが、少しでも良い反応をもらえるとやりがいを感じますね。お子さんたちには、貝殻を使ったクラフト体験などから海の環境に触れてもらえればいいと考えています。

京丹後市では、毎年秋に小学校6年生を対象に体験学習「大地の学習」を行います。9月から10月にかけて、全小学校の6年生が日替わりで来ますので、琴引浜の環境保全について詳しく説明します。団体などからの要望を受けて、市外で講演することもあります。SDGsがクローズアップされだした頃は、漂着ごみについて聞きたいという依頼が多かったです。こうした地道な啓蒙(けいもう)活動に、日々取り組んでいます。

自然ごみと人工ごみを中心に貝やシーグラスを使った作品も展示

海の豊かさと陸の豊かさ、琴引浜を取り巻く自然環境全体を知ってもらいたい

今後の目標について聞かせてください。

当館のことで言えば、「海の豊かさを守ろう」ということが一番の目標になりますが、琴引浜の自然環境は海だけではありません。先ほどお話したように、浜の後背地、砂丘地形の中にも多様な環境があります。湿地や松林、広葉樹林帯まで生物多様性を育む場所として守っていかなければなりません。SDGsの「陸の豊かさも守ろう」という目標にもつながりますね。

現在、当館に新たに生物多様性のコーナーを作ることを検討しています。琴引浜を取り巻く自然環境全体を多くの方に知ってもらい、環境を守る大切さについてお伝えできればと思います。

この記事に関する目標

  • 12.つくる責任つかう責任
  • 14.海の豊かさを守ろう
  • 15.陸の豊かさも守ろう