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コラム 2024.2.29

豊かな生態系をはぐくむ内山ブナ林 未来につなぐためにできることは?

 京丹後市大宮町内山と宮津市の世良高原の境には、北近畿最大のブナの天然林「内山ブナ林」が広がっています。高い保水力を備え、多様な動植物が生息するブナ林は、豊かな自然の象徴とされてきました。しかしいま、全国的にブナ林が存続の危機にさらされています。SDGsは目標「15.陸の豊かさも守ろう」で、陸上生態系の保護や森林の持続可能な管理などを掲げています。豊かな生態系をはぐくむブナ林は、どのような状況にあるのでしょうか。

約300種類の植物が自生し、約80種類の野鳥が飛来

 内山ブナ林の面積は40~50ヘクタール。春は瑞々しい新緑、秋は黄金色から赤に移ろう紅葉などが楽しめます。ブナは、通常標高600メートル以上で育つと言われていますが、ここでは標高400メートル付近から見られます。標高680メートルの地点にある京都府内最大の「内山の大ブナ」は、推定樹齢が約350年。幹の太さは3.65メートル、樹高は32メートルと見応えがあります。

 そして、内山ブナ林の大きな特徴が、その多様な生態系です。ブナ以外に、カエデやケヤキ、クヌギなど約300種類もの植物が自生。丹後や兵庫県の但馬地域だけで見られる「タジマタムラソウ」など学術的に貴重な植物も確認されています。1年を通して、キツツキなど約80種の野鳥に出合うこともできます。上世屋から五十河の一帯は2002年、「京都府自然環境保全地域」に指定されました。全国的にみても価値が高いエリアです。

陸だけでなく、海の豊かさにも関わるブナ林

 森林には、二酸化炭素を吸収するほか、雨水を蓄えて洪水を防ぎ、水質を浄化する緑のダム効果があります。なかでも、豊富な腐葉土に覆われたブナ林は、保水力に優れています。

地面にしみ込んだ雨水は、地中に張り巡らされたブナの根の働きで深く地面に入り込んでいきます。そして、長い年月をかけてゆっくりと河川へ流出し、海へと流れていきます。地中で養分を蓄えた水は、プランクトンなどにも良い影響を与えると言われています。ブナ林は陸の豊かさだけでなく、海の豊かさにも関わっているのです。

ブナ林で養分を蓄えた水は、長い年月をかけて河川へ流出し、海へと流れていきます

存続の危機にあるブナ林を守るために

 しかし、日本のブナ林は現在、存続の危機にさらされています。地球温暖化で気温が上昇し、ブナの成育域が大きく狭まる恐れがあるのです。一般的に、標高が150メートル上がると気温が1度下がると言われています。ですから、仮に気温が1度上がると、標高400メートルからブナが見られる内山ブナ林は、ほとんど消滅してしまいます。独立行政法人森林総合研究所の予測では、このまま地球温暖化が進めば、21世紀末にはブナの生育に適した地域は現在の1割以下に縮小し、もともとブナ林の少ない四国、九州では消滅するとされています。

 内山ブナ林をはじめとした、洪水や渇水を防ぎ、豊かな生態系をはぐくむブナ林を守るためには、どうすればよいのでしょうか。それには、私たち一人ひとりの取り組みが欠かせません。例えば、家電を使う時に省エネを意識する▽ごみを減らす▽外出の際は公共交通機関や自転車の利用、徒歩を心がける、といった小さな取り組みも、地球温暖化対策につながっていきます。貴重な生態系の宝庫を未来へつなぐためにも、まずはできることから始めてみませんか。

●内山ブナ林散策には下記サイトを参考にしてください