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オープンテラスがお店、待合室が作品展の会場に
SDGsは、「3.すべての人に健康と福祉を」で誰もが幸せで健康な生活を送ることを、「11.住み続けられるまちづくりを」で、ずっと安全に暮らせるまちをつくるといった目標を掲げています。弥栄ゆう薬局の取組について聞かせてください。
船戸 弥栄ゆう薬局は2022年5月のオープン以来、京丹後市弥栄町や網野町、丹後町の方々を中心に、保険調剤や服薬指導、在宅訪問などを行っています。車で移動される方が多い地域ですので、ゆう薬局グループとして初めてドライブスルーを設けました。現在は、お客様の約半数がドライブスルーを利用されています。車に乗ったままで薬の受け取りまで完結しますので、待合室にいるよりも個室に近い感じでお待ちいただけますし、足が不自由などで車から降りるのが大変な方でも薬の説明を受けていただけます。
当グループは、それぞれの店舗で地域とのつながりの中でできる活動に取組んでいます。弥栄ゆう薬局では、オープンテラスや待合室を地域の活動の場として提供しています。オープンテラスでは、日替わりで平岡さんの「黒部とうふthis way」やクレープ屋さん、社会福祉法人など地域の事業者の方々に出店してもらっています。待合室は、現在(取材は2024年11月中旬)は、障害者アートの作品展「TANGOまるっぽ美術館」の会場「まちの美術館」として作品を展示しています。同じ弥栄町内にある京都府立清新高校の生徒の活動の場にもなっていて、農業科の生徒が作った新米や野菜、加工品を販売したり、服飾科の生徒が制作した作品を展示したりすることもあります。
他にはどのような取組をしていますか。
岡田 地域の社会福祉協議会や住民の方からの依頼を受けて、出前講座を行っています。地域の公民館などに出かけていって、薬局の役割や処方箋のこと、お薬手帳の意義など基本的なお話から、薬の効き方や飲み合わせなどについても話します。薬局の外で、直接住民の方たちの声を聞けるのがよいですね。
地域のイベントに出展することもあります。2022年、23年と出展した弥栄町和田野地域のフリーマーケットでは、薬の相談会を実施しました。和田野地域については、地域の長寿をお祝いする会の出席者にプレゼントする商品選びにも協力させていただきました。担当者と一緒に健康に気を遣ってもらうためにはどうすればよいかを考えて、熱中症予防のための塩あめや経口補水液、栄養補助食品などを詰め合わせましたね。
地域の方が何かあった時に思い出して、相談できる場所にしたい
オープンテラスや待合室を地域活動の場として提供するようになった経緯を教えてください。
船戸 一般の方々にとって薬局は「薬をもらいに来る場所」ですし、保険調剤や服薬指導、在宅訪問という仕事はもちろん大切ですが、地域の方が何かあった時に思い出して、相談できる場所でもありたいです。健康に関することでしたら相談に乗れますし、普段から接点がある方なら、よりその方に応じた対応ができるようになります。こうした関係を地域で築くための取組の一つとして、弥栄ゆう薬局をオープンした頃から、オープンテラスや待合室を地域活動の場として使っていただけないかと考えていました。
オープンしてしばらくは、なかなかこうした活動に取組めませんでしたが、ようやく2022年秋に、若年性認知症で、写真家としても活動されている下坂厚さんの写真展を待合室で開くことができました。期間は1週間でしたが、多くの方に足を運んでいただけましたね。その頃から、クレープ屋さんに出店してもらえるようになりました。
平岡さんは、どのような経緯で出店に至ったのでしょうか。また、弥栄ゆう薬局の取組について、どのような印象を持っていますか。
平岡 私は同じ弥栄町内で手作り豆腐を販売しています。不定期で飲食も提供していますが、弥栄ゆう薬局の岡田さんがお店に来られた時に、「体に優しい食事を目指して作っている」と話した流れで、出店のお話をいただきました。薬局では、手作り豆腐や厚揚げ、米粉を使ったグルテンフリーのドーナツ、おからを販売しています。お店のお客様も気にかけて来てくださってありがたいです。
こうした取組については、日常における薬局との境界が少し緩くなるといいますか、薬局にいろいろな人が来て、地域の人とのつながりが広がるのではないかと思います。薬剤師についても、いろいろな話ができる、親しみやすいイメージを持つようになりました。
地域活動を通して、より深い話ができるようになった
地域貢献活動を続けてきて、どのように感じていますか。
岡田 私はもともと地域に開かれた薬局で働きたいという思いがありました。地域の活動で関わった方々が薬局に来られたり、普段薬局に来られている方と地域の活動でお会いしてより深い話ができたりと、新たなコミュニケ―ションが生まれているのがうれしいです。
船戸 一度そういうコミュニケーションが生まれた方なら、薬局に来られた時にも同じ流れで話をしてもらえると思うんですよね。今回のまるっぽ美術館の期間中も、多くの方々に出店していただけて、当初考えていたことがある程度形になってきたなと思っています。
薬局を、さまざまなコミュニケーションが生まれる場に
今後の展望を聞かせてください。
岡田 今回のまるっぽ美術館の作品展示を通して、地域の方にいろいろなご協力をいただきました。期間中は薬局のフリースペースに常に誰かがいらっしゃって、普段は見られないコミュニケーションが新しく生まれることもあり、とてもうれしかったです。スタッフとしても楽しかったので、まるっぽ美術館が終了しても、可能な限りこうした取組を続けていきたいという気持ちが強まりました。よりいろいろな方に使っていただける空間になればいいと思っています。
船戸 私たち薬剤師がちゃんと相談に乗れば、今より安心感を持ってもらえる、健康を支えることができる人たちが、まだまだたくさんいると思っています。そういった人たちと出前講座などを通して、できる限りコミュニケーションを取ることで、医療や福祉から取り残される人を減らしたいですね。
また、ゆう薬局グループとして、若手薬剤師や薬学生に1泊2日で京丹後市に来てもらい、市内の店舗で地域連携の取組を学んでもらう取組も進めています。こうした活動を広げていって、「地域医療を学ぶなら京丹後市で」という形をいろいろな方々と一緒に作っていきたいです。