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「米ぬかケーキ」に「えごまキムチ」……次々と商品を開発
宇川地区は人口約1000人。美しい日本海を望む国の重要文化財「経ケ岬灯台」や温泉施設「宇川温泉よし野の里」などがある風光明媚な場所ですが、近年は高齢化や過疎化が進んでいます。
宇川加工所は2013年、代表の山口洋子さんをはじめ、「地元食材で宇川を元気にしたい」という思いを持った女性8人でスタートしました。閉園した旧下宇川保育所の調理室を借りて、地元の食材を使った食品を開発することにしたのです。第1号の商品は「米ぬかケーキ」。無農薬・減農薬で米作りをしている農家を応援しようと、ミネラルたっぷりの米ぬかを使い開発しました。
2016年には、地元の休耕田でシソ科のエゴマの栽培をスタート。収穫した葉で作った「えごまキムチ」は人気商品となりました。メンバーが岩場で摘んだアオサを練り込んだ「磯クッキー」、農林水産省の「日本の棚田百選」に選ばれた袖志の棚田の玄米を煎ったはったい粉で「はったい粉クッキー」や「はったい粉キャラメル」を作るなど、どんどんラインアップが増えていっています。2018年からは、多くの観光客が訪れる経ケ岬灯台で、旬の食材を使った弁当や特産品の販売を始めました。
買い物難民など地域の困りごとにも取り組む
代表の山口さんは、もともと京都市で保育士として働いていましたが、夫の転勤で京丹後市丹後町袖志に移り住みました。保育士などの仕事をして地域になじんでいきながら、「ここならでは」にこだわった地場産品の加工所をつくる夢を温めてきました。宇川加工所を立ち上げてからは、同じ志を持った仲間たちとアイデアを出し合いながら、安心・安全な商品を生み出していきました。
メンバーは現在14人。宇川加工所の活動を始めてから、旧下宇川保育所には地域の子どもたちやお年寄りが訪れるようになりました。現在ではサロンや教室などを行う「宇川アクティブライフハウス」として、住民らでにぎわう施設となっています。
宇川加工所のメンバーたちは、地域の困りごとの解決にも取り組んでいます。2019年に地区で唯一のスーパーが撤退し、住民に不安が広がったことを受け、京丹後市内で移動販売を行う事業者に直談判し、週1回のルートを誘致しました。2020年には地元の自治会などと連携し、「宇川金曜市」を始めました。
若い世代など多くの人々への波及に期待
総務省の「ふるさとづくり大賞」では、これらの活動が高く評価され、受賞につながりました。宇川加工所の取り組みは、SDGsの健康や福祉、まちづくりなどの目標にも合致しています。
山口さんは「そこに住み続ける住民たちが地域をあきらめてしまったら、何もそこから生まれない」と前向きです。その想いに賛同するメンバーたちも、ピンクのユニホームを着て、元気に活動を続けています。宇川加工所の活動が今後も、若い世代をはじめとした多くの人々に広がり、ますます発展していくことを期待しています。