• ホーム
  • SDGs取組事例
  • 「これは廃棄物じゃない、資源だ」廃食用油を事業所や地域から買い取り、高純度バイオディーゼル燃料に
企業 2023.11.2

「これは廃棄物じゃない、資源だ」廃食用油を事業所や地域から買い取り、高純度バイオディーゼル燃料に

産業廃棄物及び一般廃棄物の収集運搬や、浄化槽、農業・漁業集落排水施設、下水処理場維持管理業務などを行う大西衛生(本社・京丹後市丹後町)は、NPO法人エコネット丹後と連携し、丹後地域の事業所や地域から買い取った廃食用油から、軽油の代用燃料となる高純度バイオディーゼル燃料「ReESEL」(リーゼル)を製造する取り組みを進めています。同社社長の大西明さんや社員の村上祥隆さんに、事業の概要や始めた経緯、今後の展望について聞きました。

大西衛生株式会社 大西明社長

8カ月で300件から3万7000リットルの廃食用油を回収

SDGsには、「13.気候変動に具体的な対策を」など環境保全に関する目標も多いです。現在、取り組んでいることを聞かせてください。

大西 エネルギーの地産地消を目指すNPO法人エコネット丹後との共同プロジェクト「ローカルエネルギープロジェクト」として、丹後地域の飲食店や宿泊施設、学校、家庭などから天ぷらなどに使った食用油を回収し、軽油の代用燃料となる高純度バイオディーゼル燃料を製造しています。事業所からは直接回収していますが、一般家庭向けには、各市民局や市内の公民館などに回収スポットを設け、ペットボトルに詰めて持ってきてもらっています。2022年12月中旬から回収を始め、23年8月上旬までに、300件から約3万7000リットルの廃食用油を集めました。

市内の公民館、学校、市民局などへ廃食用油回収スポットを拡大中

当社は、「廃食用油は(高純度バイオディーゼル燃料をつくるための)資源である」と考えています。ですから、廃食用油は有価物として買い取っています。回収の際に重量を測って、1リットルあたり5円で引き取ります(23年9月現在)。事業所には代金を直接お支払いしますが、公民館などの回収スポットで引き取った分は、その地域に還元するということで管理者にお支払いしています 。

高純度バイオディーゼル燃料製造装置

2023年7月から高純度バイオディーゼル燃料の精製施設が稼働

廃食用油から、どのようにして高純度バイオディーゼル燃料を製造しているのでしょうか。また、製造した燃料はどのようなことに使われていますか。

村上 回収した廃食用油は、当社の精製施設で不純物などを取り除き、高純度バイオディーゼル燃料にしています。具体的な流れを説明すると、まず回収された油をタンクに移し、遠心分離して油かすなどの不純物を取り除きます。それから薬品を加えてメタノールと反応させてグリセリンを除去すると、バイオディーゼル燃料になります。さらに純度を高めて清浄化すると、高純度バイオディーゼル燃料が完成します。だいたい200リットルの廃食用油から150リットルぐらいの燃料が精製できます。

廃食用油から高純度バイオディーゼル燃料「ReESEL」へ

大西 廃食用油は植物性の油ですので、バイオディーゼル燃料は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーになります。23年7月に精製施設が稼働したばかりで、精製した燃料は8月から、大手建設会社に販売しています。建設現場の重機の燃料に使われていますが、現在のところトラブルはないそうです。このプロジェクトではエネルギーの地産地消を目指していますので、市の所有車輌や地域の建設現場の重機、またバキュームカーやごみ収集車などの燃料にも使っていただけるようにしたいです。

バイオディーゼル燃料で稼働する発電機

プロジェクトをきっかけに、他のSDGsへの取り組みも

プロジェクトを始めたきっかけは何でしたか。

大西 もともとバイオディーゼル燃料に興味があったんですよ。2019年に藍綬褒章を受章したことから、「世の中や地域のために何か役に立てることがないかな」と、改めて考えました。そんな時に、たまたま出会った知人から「高純度のバイオディーゼル燃料を精製できる機械があるので一度見に来てほしい」と言われたんです。それから機械を見に行き、事業化に踏み切りました。

SDGsの目標に取り組んでみて、社内で変化はありましたか。

大西 当社は廃棄物を扱っていることもあり、SDGsの目標を見ながら、社内でもペーパーレス化や、紙コップを廃止してマイグラスを持参するといった取り組みを進めています。当たり前ですが、ごみのポイ捨てなどは厳禁だと従業員には伝えていますね。また、地域のクリーンキャンペーンにも参加しています。これまでは浄化槽の洗浄など、きれいな水にして川に戻すということに主眼を置いて事業を展開してきましたが、他にも環境を守るために弊社としてできることを、今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。

地域のクリーンキャンペーンにも法人として参加

環境を守るため、できることから取り組んでいきたい

今後の展望について聞かせてください。

大西 まずは地域で集めた廃食用油から精製した高純度バイオディーゼル燃料を、地域で使っていただけるようにしたいですね。要望があれば、近隣の自治体でも回収を請け負い、販売していくことも考えています。また、バイオディーゼル燃料とは別の話になりますが、下水道から出る汚泥を堆肥化する事業に取り組みたいという気持ちもあります。京丹後市の場合、現在は汚泥を焼却し、最終処分場に持っていっていますが、それを有効活用できるようにしたいです。

現在は、燃料価格もそうですが、肥料価格も高騰しています。廃食用油を高純度バイオディーゼル燃料にして、下水道から出た生活用水を有機肥料にして、地域に還元できればいいですよね。そうすれば、二酸化炭素の削減やカーボンニュートラルにも近づきます。できることから取り組んでいきたいです。

村上 高純度バイオディーゼル燃料の製造については始めたばかりですが、原料となる廃食用油は順調に回収できています。今後はスクールバスや事業関係の車両の燃料など地域で使っていただき、広がっていったらいいなと考えています。地域の方々にも興味を持っていただけるとうれしいですね。

左から社員の永島さん 専務取締役 大西啓代さん 代表取締役 大西明さん 社員の村上さん 社員の島本さん

この記事に関する目標

  • 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任