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企業 2023.12.25

「命が循環する畑を残したい」思いを共にする仲間たちが集まり、農薬や化学肥料を使わない自然農法を実践

無農薬野菜を栽培、販売する自然耕房あおきは、2001年の創業以来、京丹後市大宮町の畑で農薬や化学肥料を一切使わない自然農法で野菜を作っています。初代耕房主の青木伸一さんは試行錯誤を繰り返し、作物の栽培に適した豊かな土壌を作ってきました。伸一さんの急逝後は、妻の美恵さんらが農園を法人化し、さまざまな人たちの助けを借りながら野菜を作り続けています。農園の代表取締役を務める青木美恵さんに、環境に優しい野菜作りについて話を聞きました。

株式会社自然耕房あおき 青木美恵社長

土作りにこだわり、元気な野菜を育てる

SDGsは環境に配慮した、持続可能な社会の実現を目指しています。自然耕房あおきは「豊かな命が循環する仕組みを作る」ことを掲げていますが、どのようなことに取り組んでいますか。

京丹後市大宮町の約5ヘクタールの畑で、農薬や化学肥料を一切使わずに野菜を栽培しています。現在作っている野菜は、1年を通して約150種類。秋はサツマイモやジャガイモ、冬は大根や白菜、ニンジンといった季節の野菜や、お客様から要望があった品種を作っています。珍しいものですと、プチヴェール(アブラナ科の野菜)やカーボロネロ(葉キャベツの一種)、紫唐辛子などでしょうか。収穫した野菜は、関西地方を中心としたホテルやレストランなどに納めるほか、インターネットなどで販売しています。

環境に優しい農業を実践するためにこだわっているのは、土作りです。土の中の微生物の活動を活発にすることで、農薬や化学肥料を使わなくても野菜が元気に育つようになります。そのために、広葉樹のチップや刈り草、もみ殻などを土にすき込み、時間をかけて土を作っています。(農園を立ち上げた頃から)20年以上かけて作った土で育てた野菜は、自然の甘みやコク、旨みがあります。お客様からは「火の通りが早い」「持ちが良い」などと言われますね。

農業をするために一家で移住、独学で有機農業を学ぶ

約20年前に一家で京都府長岡京市から京丹後市に移住し、農業を始めました。なぜ有機農業に取り組もうと考えたのでしょうか。

夫はもともと建設会社に勤めていましたが、環境問題に関心を持ち、「自然を守る仕事をしたい」と話すようになりました。それで農業、中でも有機農業をしたいということで、京丹後市で減農薬栽培に取り組む農家のところで学ぶことになったんです。私は農業のことは分かりませんでしたが、「後悔してほしくない」という思いがあり、夫と子どもと3人で京丹後市に移り住みました。

夫は減農薬栽培の農家で農業の基礎を学びましたが、有機農業をやりたいという思いは強く、独学で勉強を始めました。当時はまだ有機農業は現在ほど広がっておらず、身近で教えてくれる方もいなかったので、1日中、あらゆる書物を読み漁っていました。農園は1ヘクタールの畑からスタートしたのですが、何度も失敗しながら、土を作っていったのです。土作りや作物の植え付け、除草、収穫などのサイクルも、一から自分で作り上げていきました。

収穫作業は地元の人も手伝ってくれる

「できるところまでやってみよう」農園の継続を決意

2015年に伸一さんが亡くなられた後、なぜ京丹後市に残り、有機農業を続けようと考えたのでしょうか。

私は実家のある大阪に戻ることも考えましたが、亡くなったのが11月で、ちょうど冬野菜の植え付けが終わっていたんですね。「何でもいいから出してください」と言ってくださるお客様もいて、従業員も残ってくれたので、冬の間は収穫作業をしました。そうして日々を過ごすうちに、私の中に「慣れ親しんだこの地を離れるのも嫌だな」という気持ちが芽生えてきたんです。夫が作った土を「価値があるものだ」と感じて協力してくださる方や、栽培面や経営面で指導してくださる方も出てきました。 周りは「美恵さんの人生だから、農業を続けることはない」「長年かけて作った畑を手放すのはもったいない」など、「続けなくてもいい」「続けてほしい」という意見が半々でした。迷いましたが、「後悔したくない。大阪にはいつでも帰れるし、私の気が済むまで、できるところまでやってみよう」と、農業を続けることにしました。そして2016年、夫や私の思いに賛同してくれる女性たちと会社を設立しました。

サラダ野菜はオリーブオイルと塩のみで食べるのがオススメ

命が循環する、持続可能な畑を次世代へ

化学肥料に頼らず、自然のサイクルで行う農業を続けてきて、現在、どのようなことを感じていますか。

夫が亡くなった時は、周りの方々から「この畑を手放してはいけない」と言われても、なかなかそこに思いが至りませんでした。しかし、自分が有機農業に取り組む中で、「この畑をずっと残していきたい。手放したくない」という思いが強くなってきました。続けていきたいという気持ちに変わったんですね。現在は、「続けるためにどうすればいいかな」、「どうすれば畑を残せるかな」と考えるようになりました。

年間150種類以上のおいしい野菜ができる

今後の目標や取り組みたいことについて聞かせてください。

まずはこれまで通りに土作りを続けていきます。そうしてこの畑を継いでくれる人、この畑のことを思ってくれる人を見つけて、バトンタッチしたいです。

この畑の土は、種をまいたら作物が育ちます。草刈りなどは大変ですが、地域の方や、福祉施設の方たちが手伝ってくれます。遠方から来て手伝ってくれるお客様もいます。コロナ禍でも、近くの旅館の方が来てくれました。いろいろな方々がつながって、命が循環する、持続可能な畑を作ってくれています。

ですから、この畑を残すために、農業で経営が成り立つようにしていきたいです。土作りも大切ですが、次につなげていける形にしたい。土のことや作業の効率化など、日々考えることはたくさんありますが、乗り越えていかないと先に進めません。苦しいこともありますが、前向きに取り組んでいきたいです。

この記事に関する目標

  • 2.飢餓をゼロに
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 15.陸の豊かさも守ろう