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団体 2023.3.29

子育ては地域づくり。一生懸命なお母さんたちを、産後ケアやおむつの提供を通して支援する

京丹後市の子育て支援団体「ゆるりら」は、網野町の元温泉旅館「月庭(つきてい)」などで、定期的に親子ふれあいサロンや子育て関連イベント、悩み相談を開いています。それに加えて、産後間もない母親にゆっくり過ごしてもらう「ゆるりHOME」、おむつの提供を通して子育て世帯とつながる「おむつ配り隊」も始めました。代表の大槻美穂子さんと副代表の大垣いづみさんに、「みんなが楽しく、できる範囲で」取り組む活動について聞きました。

子育て支援団体「ゆるりら」 (左から)大槻美穂子代表 大垣いづみ副代表

子育てサロンや産後ケア、おむつの提供などで、京丹後のお母さんたちを支援

SDGsの目標には、福祉やまちづくりに関する項目もあります。現在、取り組んでいることは?

大槻 京丹後市のお母さんたちが安心して子育てができるよう、網野町の元温泉旅館「月庭」や島津ふれあいセンター、峰山町の交流施設「まちまち案内所」などで、親子ふれあいサロンや子育てに関するイベント、悩み相談などを開いています。おやつ作りや「ねぎぼうず文庫」の出張、市内の歯科衛生士による歯科相談のほか、マッサージやランチの提供などお母さんたちの特技を生かした催しもあります。スタッフもお母さんたちも「無理せずに」というスタンスで、材料費などがかかる一部のイベント以外は無料、事前申し込みも必要なし。来たい時に来て、帰りたい時に帰ってもらっています。

大垣 2022年11月からは、京丹後市の支援を受けて、産後のお母さんにゆっくり過ごしてもらう「ゆるりHOME」を始めました。対象は、1歳程度までのお子さんとそのお母さん。月庭や峰山町の「シェアハウス益実荘」で月1回ずつ、午前10時から午後3時にかけて助産師や専門家による体のケアを受けたり、栄養バランスの取れたランチを食べたりしてもらいます。私たちゆるりらのメンバーは、お母さんがリラックスできるように、赤ちゃんを抱っこしたり、あやしたりします。

月庭とシェアハウス益実荘で月1回ずつ開催している「ゆるりHOME」
産後のお母さんに向けたマッサージ(ゆるりHOMEの時は無料、個人的依頼の場合は有料(要予約))

2022年12月からは、希望者の自宅を訪ねておむつを提供する「おむつ配り隊」も始めました。

大垣 地域の方たちからいただいた寄付で購入したオムツを、お出かけが苦手だったり、子どもが小さくてなかなか外出できなかったりするお母さん方の自宅まで届ける取り組みです。初回の12月26日は、2つの班に分かれて、SNSを通じて申し込みがあった8組のお宅を訪ねました。その時に、お母さん方と赤ちゃんの話などをして。皆さん受け入れてくれてありがたかったです。

大槻 地域の民生委員や児童委員による産後の家庭訪問もありますが、コロナ禍ですし、お母さん方もなかなか話しにくいですよね。おむつは必要なものですし、それを届けることで、子育てに悩みを抱えたお母さんとつながるきっかけにできればと考えています。

「お母さんたちの心の安定を支えたい」とゆるりらを設立

ゆるりらを作ったきっかけを教えてください。

大槻 私はもともと小学校の教諭をしていましたが、学校教育の中では、どうしても保護者を支援しにくい部分があるなと考えていました。子どもが育つには家庭教育が大事ですし、その主体となることが多いお母さんの心の安定を支えることができないかと思ったんです。早期退職して、昔の教え子のお母さんである大垣さんと話すうちに、子育てサロンの構想が浮かんできました。

大垣 私には3人の息子がいますが、大槻さんたち学校の先生方や、地域の人たちに助けてもらって育ててきました。それで、今度は自分ができることをしたいなと。大槻さんと「お母さんたちを応援しよう」と話して、2018年にゆるりらを設立しました。網野町の元温泉旅館を提供してもらえたので、そこを拠点にして。まずは「お母さんたちが集まる場所を作りたい」と、メンバーとお母さんたちがゆったりとおしゃべりするサロンを始めました。そこから、お母さんたちが興味を持てそうなイベントや、お母さん自身が特技や資格を生かして講師を務めるヨガなどのイベントを開くようになりました。

「子育て中のお母さんの心の安定を支えたいと思ったんです」(大槻さん)

子どもは地域の宝。子育ては周りの人に寄りかかって、頼ったらいい

「ゆるりHOME」は2022年12月、2023年1月と計3回開きました。参加者の反応は?

大槻 まだ取り組み始めたばかりですが、お母さんたちはとても和気あいあいと仲良く、リラックスして過ごしていました。

大垣 「赤ちゃんを産んでから、初めてご飯をゆっくり食べた」という人もいました。核家族が多くなってきていますので、配偶者と交代でしかご飯を食べられず、味も分からない状況です。1日だけでもゆっくりとご飯を食べてもらえたらいいなと。それでまた次の日から頑張れると思いますので。

「お母さんたちには『今は周りの人に頼ったらいい』と伝えたい」(大垣さん)

ゆるりらの活動を続けてきて、どのような気づき、変化がありましたか。

大槻 私たちが子育てをしてきた時代はこうした支援がなく、子育てで寝られなくても当たり前という雰囲気でした。活動を始めた頃は、お母さんたちにそこまで支援をする必要があるのかなという思いもあったんです。しかし、時代が変わっても子どもは地域の宝で、子どもが健やかに育つためにはお母さんが安定していることが大事です。ですから、今のお母さんたちに必要なことをできる範囲でさせてもらえばいいんだ、と思うようになりましたね。

大垣 私は京丹後で生まれ育ち、結婚しました。京丹後が大好きなので、皆さんにここで生きていってほしいと思っています。まちの課題はありますが、一生懸命で、未来に希望を持っているお母さんたちと接するうちに、もっと応援したくなりました。子育ては大変ですが、その期間はあっという間に過ぎます。自分が受けた恩は、私たちぐらいの年になってから返せばいいので、お母さんたちには「今は周りの人に寄りかかって、頼ってやったらいいんだよ」と伝えたいです。

「無理なく楽しく」をモットーに活動している

子育て支援の輪を広げ、優しい、人が温かい地域をつくりたい

今後の展開について聞かせてください。

大垣 ゆるりらの設立から5年が過ぎ、京丹後市も子育て支援センターの開館日を増やすなど、お母さんたちの意見を子育て施策にどんどん反映していってくれています。これまでは精力的に活動の幅を広げてきましたが、今後は市の施策と重なる部分は見直すなど、必要な活動を精査して続けたいです。どうすれば丹後が子育てしやすいまちになるかをメンバーやお母さんたちと一緒に考えていきたいですね。

大槻 ふれあいサロンに来ていたお母さんの中には、現在ゆるりらを手伝ってくれている方もいます。活動を続けてきたことで、地域の中で子育て支援の輪がどんどん広がっているんですね。その輪をどんどん広げていきたいです。子育ては地域づくりです。子育て支援の輪が広がることで、優しい、人が温かい地域になっていくんじゃないかなと思います。

この記事に関する目標

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 11.住み続けられるまちづくりを