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地域 2024.1.26

京丹後市の島津地区に2年間で8世帯が移住 住民が共同で使える畑の整備や空き家活用の取り組みでまちに活気

京丹後市網野町東部の島津地区(島津連合区)では、住民有志が2021年に設立した団体「しましまベース」と自治会などが連携して、活気のあるまちづくりを進めています。住民らが気軽に立ち寄れる「しましまファーム」の整備や空き家の調査・活用などに取り組み、約2年間で、8世帯約20人が島津に移住してきました。しましまベースの発起人である島津連合区長の三野徹男さん、事務局を運営する元副区長の坪倉睦男さんにこれらの活動や今後の展望について聞きました。

しましまベース 発起人の三野徹男さん(左)事務局の坪倉睦男さん(右)

住民らが気軽に使える「しましまファーム」を整備

SDGsの目標には「11.住み続けられるまちづくりを」という、持続可能なまちづくりを目指す項目があります。しましまベースの概要や活動について聞かせてください。

三野 しましまベースは2021年に、「島津のまちを盛り上げていこう」と考える島津連合区の住民有志で設立しました。島津には愛宕・大谷・大橋・春日・島津口・溝川の6つの地区がありますが、これらの地区の自治会や連合区と連携しながら活動しています。

坪倉 現在のメンバーは十数人で、住民らが共同で使える畑「しましまファーム」の運営や、地域にある空き家の調査・活用などに取り組んでいます。しましまファームは2021年、島津小学校と島津保育所の近くにある空いた畑を借りて整備しました。広さは約350坪で、春はサツマイモなどの苗植や種まき、秋には収穫のイベントを開きます。イベントには20家族ぐらい、5、60人ほどが参加しますね。その時には、丹後町の碇高原牧場からヤギを借りますが、子どもたちに人気です。畑には、住民らがいろいろな花の苗を持ち寄って植えるスペースもあります。休憩もできるウッドデッキを設置しました。

しましまファームでサツマイモの収穫
起業体験イベント「はじめてのお店」

使われていない機織り工場を改修、シェアハウスに

島津連合区にある空き家の調査・活用にも取り組んでいます。

三野 島津連合区には、30軒近くの空き家があります。子どもが家を出た後に、そこに住んでいた親が福祉施設や病院に入るなどして、空き家になるケースが多いですね。ただ、家主の親族の意向もありますし、すぐに他の方が入居できるような空き家はありません。このため島津連合区では、毎年実施される京丹後市の空き家調査に合わせて地区内を調査し、リストを作成しています。また、各地区の区長が定期的に空き家の所有者に連絡し、賃貸や売却、処分といった将来的な意向を尋ねています。

坪倉 さらに私たちを含むしましまベースの有志で出資して2022年、空き家の有効活用や管理をする事業会社「シロウトニケ」を設立しました。その第1弾の事業として2023年5月に開設したのが、移住者向けのシェアハウス「ニケ荘」です。丹後ちりめんの機織り工場として使われていた建物を家主さんからお借りし、賃貸住居として使えるように改修しました。
2階に個室4部屋と共用の台所やリビング、風呂、洗面所、トイレを設置。1階はもともとあった居住スペースを生かし、和室やリビング、台所、風呂、トイレを備えた家族向けの住居にしました。現在(2023年12月時点)は全ての住居が埋まっていますね。
2022年からは、島津小学校区の小学生を対象にした起業体験イベント「はじめてのお店」をスタートしました。子どもたちに、事前にワークショップなどを通してお店を企画・準備してもらい、イベント当日は自分たちでお店を運営してもらいます。2023年11月のイベントには4店舗が出店し、大盛況でした。

三野 イベントでの経験は、子どもたちにとって自分でも商売ができるんだという自信につながります。私の同級生でも、島津を出ていって帰ってこない人がいます。帰ってきても仕事がないからです。自分で仕事を作れるということが分かれば、将来、帰ってきたいと思ってくれるかなと。

「人口が減少していくことに危機感を感じていた」(三野さん)

「島津を盛り上げたい」住民有志で団体設立

しましまベースはどのようにして設立されましたか。

三野 私は島津の自然が好きで、ずっとここで暮らしていますが、人口が減少していくことに危機感を抱いていました。2020年に移住促進も兼ねて島津連合区のホームページを作ろうという話になり、京丹後市への移住を支援している「丹後暮らし探求舎」に相談しました。すると、「ホームページを作る前に、まずは住民の考えや思いを聞いた方がよいのではないか」というアドバイスをいただいたんです。

坪倉 それで住民約1200人のうち、小学5年生以上の約900人を対象に、島津の良いところや自慢したいところなどを尋ねるアンケートを実施しました。

三野 アンケートで前向きな意見を書いてくれた人たちとの交流を重ねるうちに、「島津を盛り上げていける団体を作りたい」という話が出てきたのが、設立のきっかけです。

活動を続けてきて、島津のまちにはどのような変化がありましたか。

三野 連合区やしましまベースの空き家活用や移住促進の取り組みの相乗効果と言いますか、自分で不動産会社から空き家を購入し、移住する方も出てきました。2022、23年の2年間で、8世帯約20人が島津に移り住んでいます。島津には海が見えるなどの大きな特徴はありません。それでも移住してきてくれる方々がいるということは、取り組んできたことへの自信になっています。移住者が増えたことによって、まちの雰囲気も良い方向に変わったと感じています。

坪倉 ニケ荘に新しい住人の方が出入りするようになり、空き工場だった建物に夜、部屋の明かりが見えるなどですね。また、地区内で2023年秋にカレー店がオープンし、その後には地域おこし協力隊員が空き店舗を活用した大判焼き店を開きました。こうした動きも住民にとって刺激になっています。私自身も、2023年4月から個人事業を始めました。いわゆる「何でも屋」で、移住者が入居する空き家の片付けなど、さまざまな頼まれごとを請け負っています。

「任意組織であるしましまベースなら継続した取組ができる」(坪倉さん)

目の前の課題を一つずつこなし、未来につなげる

今後の展望について聞かせてください。

三野 若い世代や子育て世代に来ていただければありがたいですね。子どもが小学校を卒業するまで、中学校を卒業するまでといった一定期間の移住もありだと思います。島津ににぎわいを作るため、これからも私にできることを取り組んでいきたいです。

坪倉 各自治会でもさまざまな取り組みをしていますが、役員の任期もあり、継続した取り組みが難しい面があります。任意組織であるしましまベースなら、その活動をカバーすることもできます。いきなり大きなことをするのは難しいですが、移住希望者への対応にしても、使える空き家を当たるなど、目の前のことを一つ一つこなしていくことが、積み重なって今後につながっていくと考えています。

この記事に関する目標

  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 15.陸の豊かさも守ろう